バンコック三田会の皆様へ

早慶クリスマス会幹事の小茂鳥です。

先日、稲門会石川幹事と共にティーカップの収益を洪水被害義捐金として松永会員紹介のボランティア団体SVAに届けてまいりましたので報告いたします。

今回の義捐金11,200THBは子供の日(1/14)に洪水被害地区の子供達へ贈る文房具購入代として活用されるとのこと、後日、同団体より写真等が送付されてくる予定です。

ところでSVAは日本国の社団法人で国際的に活躍しています。
かつてはタイ国向けODAも潤沢で予算の3割は日本国からの支援で賄われていましたが、昨今はタイそのものが発展したことで、予算が減らされ懐事情は厳しいようです。
タイのオフィスは何とクロントイにあります。今回、窓口になっていただいた八木沢さん(団体のアジア地域責任者)より、せっかくクロントイに来られたのですから、スラムを見ていきますか?との申し入れをいただき案内していただきました。以下、長文ですがそのレポートです。

SVAのオフィスがあるクロントイ・70ライという場所は道も広く周囲は人材開発センターや学校などがあり、ごく普通のタイの町並みです。八木沢さんの案内で日本人実業家が1億円を寄付して建てられた小学校の横をズンズン進みます。ソイの幅は1~2m、チョッと細めのソイです。しばらく進んだ後、いきなり家と家の間、5,60Cmの隙間に入りました。
ウーーンこれがスラムですか??
右折したり左折したり方向感覚が分からなくなります。暫く進むと強烈な臭気が襲ってきました。足元は舗装されたコンクリートですが、道の脇や高床式の家の下は真っ黒の汚水です。深さは分かりませんが何やらブクブクと泡も発生しています。誤って足を滑らせたら原因不明の湿疹に冒されることは間違いないでしょう。
この辺りは昔から湿地帯で雨水や排水の逃げ場がないそうです。今は乾季ですが雨季には一体どうなってしまうのでしょうか?
家そのものは大体が4畳半程度です。勿論エアコンはなくどの家も、窓、扉を開け放っていて中の様子が目に入ります。ここと比較すればカオサンのゲストハウスでも5つ星とは云いませんが、3つ星クラスのホテルに思えるのでは??奥に進む内に軒先が低くなり、身長179cmの僕は屈まないと進めません。
軒下に電気のメーターがあります。凄い!メーターの下から配線が5つ6つと蛸足のように周囲の家に取り込まれています。おそらく違法な後付配線でしょう。ホントにこういった点ではタイ人は器用さを見せてくれます。

このクロントイスラムはバンコックに約1,000箇所あるスラムの中で最も大きく約10万人が暮らしています。(因みにスラム全体では150万人と言われています。)かつてはクロントイ港の荷役業務に携わっていましたが機械化により職を失い、多くの人たちは工事現場での日雇いやあるいは近隣のクロントイ市場に職を求めているそうです。
八木沢さんによれば9割の人は普通に暮らしていますが、一割の人は最底辺の暮らし故、貧因の悪循環から抜け出すことができず麻薬等の危険なビジネスに依存せざるを得ないといった問題を抱えているとのこと。

又、八木沢さん曰く皆さんの周りにいるタイ人(中流以上の)の半数はこのようなスラムの実態を見たこともない人、半数は知っていても見ぬ振りをしている人です。タイの政治が(民主主義?)上手く回らない要因はその辺りにあるかもしれませんね? とのことでした。当然スラムの住民の9割は赤シャツ派だそうです。

事務所に戻って更に話しをうかがいました。SVA施設の1階は子供図書館になっていて、学校が終わった後、あるいは休みの日は子供達が集まってきます。家にエアコンはありませんからSVAにくれば涼しく、またスラムは狭く子供達が遊べる場所もないのでここは子供達にとっては魅力的な場所なのでしょう。
かつてこの図書館に毎日のように出入りしていた少女がいたそうです。家では両親の喧嘩が絶えず、行き場がなく、図書館に来ても始終、泣いていたそうです。で、この少女、毎日図書館にきて、置いてあった本を全て読破してしまったたそうです。奨学金を貰い小学校、中学、高校と飛び級で進みチュラロンコーン大学に進学、その後も米国留学、フランス留学を遂げ、更には何と100人に一人の難関を突破しタイ国外務省に入省、現在は外務省唯一のロシア語のスペシャリストとして活躍しているそうです。
また別な地区のやはりSVAが運営する養護施設でもその施設の子供達が、通う学校の学年で1番から3番を占めてしまったそうです。子供達に教育の機会を与えるというサポートは何にもまして有効、かつ有意義な方法なのでは?と感じ入った次第です。

ところで聞くところによれば外交官になったのも少女、学年でTOP3を占めたのも女の子であったそうです。
頑張りやで、寛容かつ包容力のあるタイの女性は世界で一番優秀な女性かもしれません。
(ということで僕のレポートはいつもこういった結論に導かれてしまいます。)

以上、洪水のため中止になった2011年早慶クリスマス会でしたが皆様の義捐金で、タイの将来を担う子供達に幾ばくかの夢を見させてあげる事ができたかな、と考えております。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。
(小茂鳥 恵 80法)